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「森林と健康 シンポジウム」盛況に開催されました!
6月22日(土)午後1時半より、東京農業大学・横井講堂において、日本森林保健学会、東京農業大学、森林文化協会の合同主催による、「森林と健康シンポジウム」が盛況に開催されました。
日本森林保健学会創設10周年を記念してのシンポジウムでもあります。
シンポジウム第一部の司会は、東京農業大学・森林総合科学科3年生の徳田友紀さんが行いました。
まずは学会理事長の上原 巌(東京農業大学 教授)が「森林と健康」について、基調講演を行いました。
講演の中で上原理事長は、
- 森林=健康のイメージが定着しつつあるが、森林も人間も様々でその差異も大きく、森林で健康になる場合もあれば、そうでない場合もある
- 森林環境の条件と個人条件がうまく合致した時に健康がもたらされる
- 万人に対する森林保養のレシピは作り難い
- 森林別、個人別の事例を重ねていくことが現在は最も大切
- ムードに乗ったビジネス投資は危険
などのことを述べ、地域病院、認知症、PTSD,会社員、教員など、それぞれ対象者とした森林療法の各事例を報告し、森林環境の健全度と人間の健全度は比例するのでは? との仮説でしめくくりました。
その後、休憩をはさんで、学会から3つの研究報告が行われました。
東北医科薬科大学の住友和弘先生が、「地域医療における森林利用」について研究報告を行い、森林散策と大気測定による揮発物質との関連性や、地域における森林散策の定期的な実施によって、地域住民の高血圧患者の割合と脳卒中死亡率が減少した事例を報告されました。
また、この事例から、地域の森林資源を活用した健康増進は、今後の人生100年時代における可能性があることも最後に述べられました。
次に、東京大学・富士癒しの森研究所の竹内啓恵特任研究員が、「森林環境と心の健康づくり」について、報告しました。自分自身の経験から、森林におけるメンタルヘルス活用の重要性についてまず述べ、その後、森林散策カウンセリングの実際の事例を報告されました。
森林カウンセリングの意義とカウンセラーの役割についても言及し、都市部の緑地を活用したメンタルヘルス対策の可能性についてもお話しされました。
最後に、森林総合研究所の高山範理室長が、「森林浴の科学的効果」について発表し、森林浴の国内外における研究の現況や、各評価指標や手法について、また森林浴を中心とした環境づくりや幸福度の向上など、今後の社会における可能性についても言及されました。
第2部はパネルディスカッション。ディスカッションに先立ち、森林文化協会常任理事の沖浩様よりご挨拶をいただき、続いて東京農業大学副学長で、同大学稲花小学校校長の夏秋啓子教授から、そして同大学森林総合科学科長の佐藤孝吉教授よりご挨拶をいただき、そのまま第一部での登壇者4名も加わって、パネルディスカッションが始まりました。
テーマは、「幼少期の森林体験」、「自分の人生で印象に残っている森林体験」「今後の森林教育、研究に期待すること」の3つです。
回答はそれぞれ百花繚乱。ユーモアも織り交ぜながら、楽しくディスカッションは進行しました。やはりキーワードは、「多様性と多領域の融合」で、様々な方が、様々な思いで集まることにとって、より豊かな森林の保健休養機能が導き出され、高まることに意見が全員の意見が一致しました。
最後に会場からの質疑応答の時間をもうけ、
- 森林療法が地域医療で定着するには?
- 野外に出たがらない対象者を森に連れ出すには?
- 森林での良い就職口はあるか?
- 森林を活用したコーチングの可能性
などの質問が参加者から出されました。
- については、まずは地域での実効数値、事例を重ねていくことが大切である
- については、いきなり屋外に連れ出さず、室内でも緑のイメージを持つなどのステップから始めること
- については、就職することを考えるのも一案だが、自分で起業してみるのも一案
- については、心身を鍛える場としても森林は好適な環境である
などの回答が導き出されました。
以上、あっと言う間の3時間のシンポジュウムでしたが、会場は終始、あたたかく、かつ熱心な雰囲気に包まされていました。
なお、今回のシンポジュウムは、定員200名の事前登録制を取らせていただきました。お申し込みをいただき、ご参加いただいたみなさま、本当にありがとうございました。
皆様方に今度は、森林でお目にかかれますことを、楽しみにしております。
また、会場を提供し、事前準備からご協力いただいた、東京農業大学の皆様方にも厚く感謝申し上げます。