新着情報:今月のひとこと 一覧
神-森-樹木-信仰-人間
先日、信州の伊那谷に出かけてきました。途中で諏訪を通りましたが、諏訪では「御柱祭り」という郷土歴史色の濃いお祭り、日本三大奇祭にも選定されています。
その御柱祭りでは、天然性の高齢のモミの木が森から伐り出され、人々の手によって山峰を越えて運搬され、奉られます。つまり神様と森林と人間が御柱を仲立ちとしてつながるという習わしでもあります。
しかしながら、森林、樹木を媒介して、神と人間がつながるという行為は、実は他国でもみられます。林業国のドイツでも、毎年5月には「Maibaum:5月の木」と名付けられたマツ科やカバノキ科の樹木が神聖な木として選ばれ、まちなかに立てられます。
日本の神社の境内や参道には、高くそびえるスギやクスノキのご神木がありますね。それらのご神木は神様が降臨しやすいように背高く保存され、あるいはご神木そのものが神様になるのです。
- 諏訪の御柱祭りのモミの木としめ縄(JR岡谷駅)
- 毎年5月に立てられるドイツのマイバウム
森林や樹木を介して、神と人間が接する。
国際的、民族的にも面白いテーマですね。
海外との共同研究
2024年末、台湾での森林療法の国際ワークショップおよび国際会議に参加してきました。連日盛況で、台湾の自然、人々のエネルギーとバイタリティーを感じてきた次第です。
2013年に台湾には台湾森林保健学会ができ、現在も公式な本学会の姉妹学会として共同調査研究をおこなっているところです。
今回、連日のアクティビティに参加し、私自身も研修会と講演を担当して感じたことは、いまや世界の森林療法は2つの流れがあるということです。一つは、心身の保養や療養、リハビリテーション、また健康増進のための森林療法、そしてもう一つは地域の観光資源、レクリエーションとしての森林療法です。いずれにしましても、森林とヒトとがより良い関係性を保持していくことを願っています。
雲林縣でのワークショップの様子。かつて日本人が植えたというモウソウチクの竹林を利用しておこないました。
台北市での国際会議を終えて。
右から6番目がわたし。私の右が台湾の森林・自然保全長官、左が雲林縣知事。
今年、2025年も海外に出かけていく予定です。様々な国々の森林、人々との交流を通して、相互理解と世界平和の実現も目指します。これが今年の新春の願いです!
(理事長 上原 巌)
あけましておめでとうございます 2025年 令和7年 元旦
みなさま あけましておめでとうございます
旧年中は大変お世話になりました。
本年もどうぞよろしくお願い申し上げます。
いかがこのお正月をお過ごしでしょうか?
日本の神社は社叢林、つまり樹林、森林の中にあり、神様、神殿はその中に鎮座されていますね。神様は森林の中におられる。これも日本の文化の一つです。
でも、森林の中には妖怪や魔物がすむ文化もあります。
魔女や狼男がすみ、お菓子の家がある森林イメージの文化もあるのです。
- 樹林からのぞむ海と富士山。森、海、山のすべてがあります。
- うっそうとした森林の中の神社。神様におまいりするために山道を登ります。
今年も森林に親しむ1年にしてまいりましょう!
日本森林保健学会 事務局一同
成城学園の里山の名残り 映画「七人の侍」のロケ地はいま
戦前からの高級住宅街で知られる、世田谷区の成城学園。実は成城一帯には、今でも里山の名残りがみられます。国分寺まで断続的に連なる緑地の崖線があり、あちこちで湧水もみられるのです。
1954年(昭和29年)の黒澤明監督の代表作の一つである「七人の侍」。この不朽の名作のロケも、成城学園近隣の世田谷区大蔵の里山でおこなわれました。現在でもその跡地は樹林として残っており、散策することもできます。誇り高い住宅街、映画、その双方はみどりの樹林から生まれたわけですね。
- 成城三丁目緑地にみられる湧水。天然の清水です!
- 映画「七人の侍」のロケ地(世田谷区大蔵)
2024年 令和6年も師走。
今年も大変お世話になりました。
来年もどうぞよろしくお願い申し上げます。
日本森林保健学会 事務局一同
高齢者と森林療法:韓国での国際会議
10月24日~26日まで、韓国の東国大学(ソウル市)にて、高齢化社会に向けた森林療法の国際会議とワークショップが開催されました。
本学会の上原理事長は招待講演をおこない、日本での高齢者対象の森林療法の事例を報告いたしました。1999年の日本森林学会で森林療法が上原理事長に提唱してから25年。現在、森林療法は世界各国に広がり、今回のようにテーマを特化した国際会議まで開催されるようになりました。

国際会議には、東アジア諸国を中心に集会しました。
高齢化は世界各国での大きな社会課題ともなっています。お隣の中国では、65歳以上の人口は現在2億3000万人。2050年には4億人になることが予想されています。高齢化のスピードは予想以上に早く、その超高齢化(Super-Aging)は日本でも進行中です。
今回の国際会議では、その高齢化社会の暮らしにおいて、森林環境を活用することによって、
- いかに健康を増進し、保持するか?
- いかに疾病を予防するか?
の2つが大きなテーマとなりました。
韓国の研究では、森林率の高い山村においては、幸福感、健康度が高い傾向があるが報告され、ドイツの研究では、森林療法の効果には、その森林環境の樹種はあまり関係がない(?)ことなども報告。台湾の研究では、病院入院中の患者さんに対する樹木の香りの効果が報告されました。
森林療法はこれからも様々な紅葉の彩りのように、様々な姿を見せながら変化をしていくことでしょう。
森林と一緒に自己の人生の時を重ねていく。そんな生き方も素敵ですね。

韓国も紅葉が綺麗です