新着情報:今月のひとこと 一覧
コロナウイルスvs森林
コロナウイルスが連日報道されています。
その流行の実態が不透明なまま、買い占めなどの二次的な騒動を引き起こしているところもまた厄介なところです。
人ごみに不必要に出かけない、大人数での集会を開かないなど、様々な予防指針も出されていますが、自宅の環境以外では、もし近隣にあるのであれば、森林も安全な場所と言えます。
※ただし、大人数ではダメです。
森林の空気は一般に清浄であり、殺菌効果を持つ樹木、植物もあります。
心身が疲れたり、癒しを必要としたりする時だけでなく、コロナウイルスのような伝染病の時にも森林は安全な避難場所(safe site)になります。
そう言えば、かのニュートンも万有引力の発見をしたのは、ペストがロンドンをはじめとする都市部で流行し、生まれ故郷のウールソープの田舎に疎開した時のことでした。
間伐の効果
寒中お見舞い申し上げます。
みなさんは、「間伐」という言葉を聞いたことがありますか?
植えた樹木が成長し、やがて密度が高くなってきた林を適切な本数、空間に間引くことを間伐といいますね。
間伐をすると、残された樹木の成長が促進されます。
また、林の足元、林床に光が射すようにもなり、様々な植物が芽生えるようにもなります。
でも、間伐にはそのような生理、生態的な効果だけではなく、私たち人間にとっての風致作用にも大きな影響をもたらします。それは間伐によって見かけがすっきりし、林間の見通しが利くようになるため、歩く人の不安感を和らげるはたらきがもたらされるのです。たしかに鬱陶しい林間を歩く時には、まるでジャングルの中を歩くような不安感や恐怖感もありますが、いったん林間がすっきりすると、落ち着いて過ごすことができます。
通常の林業で行われている間伐にも、保健休養効果に影響力を持っているのですね。
森は逃避の場所!?
あけましておめでとうございます。
本年もどうぞよろしくお願い申し上げます。
「森林は心身を癒す」
「森林に出かけると、健康になる」
現在このようなフレーズが世界のあちこちで聞かれます。
様々なビジネスが絡み、そのバイアスの影響もあって、森林の保健休養効果の研究は依然としてまだまだ玉石混交の段階にあります。
一つ一つの事象、事例は確かにその通りなのかも知れませんが、「森林=健康」と断言をすることは今なおできません。
一つの例として、「森林=逃避場所」ということも言えそうです。
人類の歴史上、森をすみかとしていた時代も考えられますが、外敵から身をひそめる場所として、また疾病やケガを癒し、体力を回復する場所としての森の存在の時代もあったことと思います。それは、現在の各地の森での保養、休養などに名残りとして残っているのではないでしょうか?
本年2020年も森林と人間のあり方について考究してまいります。
6月には、昨年同様にシンポジウムを、東京農業大学を会場に開催する予定です。
どうぞよろしくお願い申し上げます。
森は私たち人間の「逃避場所」、かくれがとしての機能も持っています。
思い出の場所=おもてなしの場所
先日、フィンランドとインドから、森林療法の友人が来日しました。
様々なところにご案内しましたが、一番みなさんが落ち着かれ、心身ともに納得されたのは、私が幼少期から慣れ親しんできた長野の森でした。有名な観光地よりも、無名で個人的な思い出のある場所の方が、友だちのこころには響き、伝わるものが多いのでしょう。自分の思い出の場所は、最高のおもてなしの場所になるのですね。
みなさんにとって、思い出のある森はありますか?
今はまだないという方でも、これからぜひそんな森を作ってみてはいかがでしょうか?
2019年も大変お世話になりました。今年は6月に学会創設10周年の記念シンポジウムを開催し、学会理事の書いた「森林アメニティ学」(朝倉書店)が、韓国、中国でも出版される節目の一年になりました。
来年2020年もまたシンポジウムの開催を企画しています。皆様方のますますのご参加を心よりお待ちしています。
それでは、みなさま、どうぞ良いクリスマスと良いお年をお迎えくださいませ。
(上原 記)
森林の健全度
台風19号をはじめ、各災害での被災地のみなさまにお見舞い申し上げます。
今年の上半期の予想では、水不足の夏になるのでは?との長期予想もありましたが、今年の下半期は本当に雨の多い年になりました。
私の実家のある長野市では、千曲川が決壊し、数多くの方々の家々が水害に遭い、今なお不便で不安な生活を送られています。
記録的な豪雨であったことも確かですが、その大量の雨水を保持することのできなかった周辺の森林にも、その水害の原因の一端はやはりあることでしょう。手入れ不足で林床植生、森林土壌の乏しい人工林では、一気に水が表層を流れ、低地に雨水をもたらし、さらに各地で侵食も発生しました。
けれども、スギやヒノキの人工林が直ちに悪いわけではありません。スギ、ヒノキの人工林であっても、継続的にきちんと手入れが行われてきた場所では、多種類な下層植生が繁茂し、たとえ大雨であっても、土壌流亡や鉄砲水はほとんど発生しなかったようです。
「森林」と一口に私たちは日頃呼んでいます。でも、その森林の健全度、真のすがたについても目を向けていくことが大切ですね。
(上原 記)
長野市・千曲川の決壊。この台風19号の災害は、海外でも報道され、国際的なニュースになりました。
長年の間、手入れをされずに放置されたヒノキ人工林。
下層植生、森林土壌が貧弱で、今回の台風後は随所にえぐられた痕が残りました。
長年にわたって、適切な手入れが行われてきたヒノキ人工林。
下層植生が繁茂し、急斜面でも、水害が発生しませんでした。