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身近な樹林の調査:思春期と森林との関係?(今月のひとこと:10月)
世田谷区立駒沢中学より、校内にある緑地の樹木を調べてほしいとの依頼があり、出掛けてきました。同校には、通称「タンチ山」という樹林があり、親しまれています。
実際に出かけて調べてみると、クスノキ、ヤマモモなどの植栽木と、イヌシデ、クヌギ、エノキ、ムクノキ、シラカシなど、世田谷のもともとの植生の樹木が混生していることがわかりました。
この樹林は、主に理科の授業・学習で使われるとのことですが、学びの場であるだけでなく、思春期まっただなかの中学生のみなさんにとって、この樹林が一体どんな存在意義を持つのか、興味のあるところです。
この地で、探検など、また逢瀬の場とするような生徒さんはいるのでしょうか?
身近な樹林は、気分転換の場となるだけでなく、ただそこにあり、四季の変化を見せてくれる、風景としての存在意義(風致効果)を強く持っています。このことは、特に都市部に住んでいる方々にとっては、樹林が伐られ、宅地に造成された後などに、肌で強く感じたことがある方も多いことでしょう。
駒沢中学は、今年で創立70周年。大樹のように、伸び伸びとした中学生の皆さんがこれからも育っていくことを願っています。
台湾からのお客さまに信州の保養地をご案内しました。(今月のひとこと:9月)
先日、国立台湾大学、馬偕医学院、行政院森林管理局などから計7名のお客様が来日されました。
今回は、日本の森林浴、森林療法、また保養地の視察を目的に来られ、御一行を、日本の代表的な避暑地であり、保養地である長野県軽井沢町と、環境省選定の国民保健温泉地である長野県鹿教湯温泉(かけゆおんせん)の2箇所をご案内しました。
軽井沢町は、国内はもとより、海外にも有名な自然リゾートですが、もともとは江戸時代からの宿場町から、高標高、高い森林率、宣教師を中心とした海外保養者の増加、また結核サナトリウムの建設などによって、「屋根のない病院」と呼ばれ、保健保養地として発展してきました。
また、鹿教湯温泉は、数百年前から、山に囲まれた地形が脳卒中、脳梗塞などの患者さんの療養、リハビリテーションに適し、様々な病気、怪我を負った人々が湯治をしてきた温泉地です。現在では、全国から、保養、療養、リハビリテーション目的の方々がお見えになり、温泉保養施設も充実しています。
軽井沢町、鹿教湯温泉、ともに地域の自然を生かした保養、療養地として歴史を積み重ねてきた場所であることが特徴ですね。
現在は、付け焼き刃的で、インスタントな「健康基地」のようなものも企画されていますが、歴史と時の流れは、安易な村おこしやビジネス企画、お金よりもやはり貴く、価値があるものです。
いにしえの癒しの旅を辿ることは、現代の新たな癒しの旅につながっています。
近な森林を再発見しましょう(今月のひとこと:8月)
残暑お見舞い申し上げます。
連日、猛暑が続いていますね。
この暑さの中、関西の地域病院で定例の森林療法を行いました。この病院では昨年より毎月2回のペースで、森林療法を行っています。
森林療法の実践にあたっては、まず看護師、作業療法士の方々と一緒に地域の森林に出掛けて踏査を行い、そのあとで患者さん、看護師、作業療法士の方々と再度その森林に出掛けて森林療法のひとときを過ごし、最後に患者さん一人一人から評価を行ってもらっています。
森林療法、森林の保健休養は、各地の森林を活用して、特別なお金、投資などをせずにできるものです。
これからも日本の各地域で、森林を活用した保健休養、医療、福祉が身近に気軽にできるようになることを願っています。
残暑厳しい折、どうかくれぐれもお体をご自愛ください。
なつかしい風景を探してみましょう(今月のひとこと:7月)
暦は、7月、文月に入りました。
各地の山村、森林を訪ねると、水田には青空が映り、カエルやセミの声を聞くことができます。なつかしい里山の風景ですね。
でも、「なつかしさ」とは何でしょう? 日頃、なにげなく「なつかしい」と思うことがありますが、よくよく考えてみると、「なつかしさ」は曖昧なものであり、英訳なども難しいものです。
けれども、あえて一言でいってみると、「なつかしいもの」とは、「昔から変わらないもの」のことではないでしょうか?
昔から変わらない自然の山、川、空気、鳥や虫の声。それは、移ろいやすい都市部にではなく、地域、田舎にあります。
この夏は、各地の「なつかしい風景」をさがしてみてはいかがでしょうか?
第5回学術総会、研修会が無事に終了しました!
6月27日(土)13時より、東京農業大学・世田谷キャンパスにて、今年の学術総会が開催されました。
今年のテーマは、「森林の健康=人間の健康!?」。基調講演をはじめ、様々な研究発表を通して、森林と人間の健康のつながりについて考えました。国内の遠方からだけでなく、台湾、アメリカからの参加者もあり、盛況に行われました。
また、基調講演、研究発表の内容は、下記のとおりです。
◆<基調講演>
「森の香りと森林ウォーキング」 中村正雄 旭川医科大学名誉教授
◆<会員発表>
- 「ナチュラルメディカルコミュニティデザイン(N-MCD)というビジョン:いくつかの萌芽と森林保健への期待」
佐藤 峻(千葉大学) - 「保健事業としての森林ウォーキングの可能性」
佐藤孔亮・住友和弘・阿久津弘明・中村正雄・長谷部直幸(旭川医科大学) - 「里山を利用した傾聴散策カウンセリングの試み ~長時間勤務の女性を対象として~」
竹内啓恵(東京農業大学大学院) - 「森林療法と森林セラピーの違い」
上原 巌(東京農業大学)
また、二日目の研修会。今年は、明治神宮の杜で、都市の中の人工林造成と天然更新、また森林風致の意義について考えました。
大正時代に造成された明治神宮は、今年で創建95年。クスノキ、スダジイ、ケヤキ、ムクノキなどの大木の下には数多くの樹木が天然更新しており、その様子を観察したり、アップダウンのある境内の参道では地形療法についても考えたりしました。
森林と人間との関係を考えることは、相互の健康、生命、生き方を考えることにつながります。
二日目間にわたってご参加された皆様方、誠におつかれさまでした。
これからもどうぞよろしくお願い申し上げます。
創建95年の明治神宮境内を歩き、森林の遷移、森林風致について考えました。
特別に許可をいただき、神宮内の水田もたずねました。
水田には、神宮内の地下水がつかわれています。