新着情報:今月のひとこと 一覧
森林の健全度
台風19号をはじめ、各災害での被災地のみなさまにお見舞い申し上げます。
今年の上半期の予想では、水不足の夏になるのでは?との長期予想もありましたが、今年の下半期は本当に雨の多い年になりました。
私の実家のある長野市では、千曲川が決壊し、数多くの方々の家々が水害に遭い、今なお不便で不安な生活を送られています。
記録的な豪雨であったことも確かですが、その大量の雨水を保持することのできなかった周辺の森林にも、その水害の原因の一端はやはりあることでしょう。手入れ不足で林床植生、森林土壌の乏しい人工林では、一気に水が表層を流れ、低地に雨水をもたらし、さらに各地で侵食も発生しました。
けれども、スギやヒノキの人工林が直ちに悪いわけではありません。スギ、ヒノキの人工林であっても、継続的にきちんと手入れが行われてきた場所では、多種類な下層植生が繁茂し、たとえ大雨であっても、土壌流亡や鉄砲水はほとんど発生しなかったようです。
「森林」と一口に私たちは日頃呼んでいます。でも、その森林の健全度、真のすがたについても目を向けていくことが大切ですね。
(上原 記)
長野市・千曲川の決壊。この台風19号の災害は、海外でも報道され、国際的なニュースになりました。
長年の間、手入れをされずに放置されたヒノキ人工林。
下層植生、森林土壌が貧弱で、今回の台風後は随所にえぐられた痕が残りました。
長年にわたって、適切な手入れが行われてきたヒノキ人工林。
下層植生が繁茂し、急斜面でも、水害が発生しませんでした。
秋になりました。森に出かけ、読書をしましょう!
季節は秋。森歩きにも良いシーズンになりましたね。
森に入ったら、ぜひ足元の林床にも目を向けてみてください。
これは、アブラチャンというクスノキ科の樹木です。
クスノキ科独特の良い香りもありますが、その実からは油が採れます。
かつての読書灯には、このアブラチャンの油が使われました。
そして、秋は落ち着いて本が読める季節でもありますね。
これは、詩人の長田 弘(1939-2015)さんの作品。
私たちには、まさに深呼吸が必要です。
表紙はいみじくも樹木のイラスト。
これもまた森林、樹木のもたらすアメニティでしょうか。
木は長寿
夏休みに、信州の実家の土蔵の片づけを行っていたところ、曾祖母の御嫁入りの際に持ってきた長持ちが出てきました。
今から100年以上前の桐製のものです。
しかしながら、材にはカビひとつなく、腐朽もありません。
これは、上ぶたです。
材には狂いがなく、緩やかな円形カーブの造りになっています。
一般に樹木は数十年から数百年も生きる長寿の生命を持っていますが、伐られて、用材となっても、依然として長生きを続けるのですね。
森歩きでの意外な効果
暑中お見舞い申し上げます。
梅雨が明け、これから各地の山や森に出かけられる方も多いことでしょう。
常日頃、運動不足の方の場合、たまに山道を歩くと、きついなあと思うことはありませんか?
特に山道は急峻なところも多く、大いに汗をかきますね。
でも、そんな時、今度は、ご自身の呼吸が鎮まるまでの時間を意識してみてください。
あんなにハアハアと息を切らして登ってきたはずなのに、ものの数分で呼吸は次第に安定していくのではないでしょうか。
「森林浴」という言葉が生まれた1980年代当初、森歩きと室内歩行では、森歩きの時の方が、歩行後の呼吸の安定が早いことが実験で示されました。心身の働きを安定化させる機能のことを「スタビライザー」とも言いますが、森歩きではまさにそのスタビライザーの作用がもたらされるのですね。
今年の夏は、森歩きをしながら、ぜひご自身の心身の安定化作用もためしてみてください。
スイーツも、実は樹木!(今月のひとこと:7月)
7月に入りましたね。
暑い日中、時にはスイーツもよいものです。
これは、大学の事務室でいただいた市販の抹茶パフェ。ゼリーもババロアも抹茶です。
でも、その抹茶、茶の木は、ツバキ科の常緑樹です。
私たちは、樹木の葉をスイーツにしているのですね。
そして、これは、先月の「森林と健康シンポジウム」おつかれさまでした、のティータイム。
農大近くのカフェでのブドウパフェです。
このブドウもやはりブドウ科のつる性樹木。
樹木の果実をいただいています。
樹木は、酸素、緑肥、緑陰、木材、環境保全などだけでなく、その果実もまた、私たちの生活を豊かにしてくれていますね。